「わび」と「さび」 (wabi & sabi)・・・・

先日Anusara Yogaの創設者、John Friend氏と立ち話をする機会があり、「わび」と「さび」の話になった。アメリカで長年ヨガを教える同氏と、日本美術や茶道の基本理念である「わびさび」について話すことになるとは、想像もしなかった。

「わび」とは静寂さ、質素さのもつ美しさ。「さび」とは古さのもつ美しさ。これらは、物質主義とは正反対の理念で、アメリカ人には理解しにくいコンセプトのはず。でもJohn Friend氏は伝統を敬う、日本の美意識「わびさび」と出会い、ヨガに対する考え方やアプローチを含め、全ての生活観が変わったと言う。

現代人は、家に居ても、街を歩いても、職場に居ても、電車の中でも、常に新しい刺激を無意識の内に求めてしまっている。朝起きたらテレビをつけ、通勤中はi-Podや携帯、会社につけば一日中パソコンと睨み合い、アフター5はネオン街に出かける。家に帰ったらまたテレビをつけ、気がついたらソファーで転寝。

この様なリズムで生活していると、静寂することを忘れ、自然の音に耳を傾けたり、景色に目をやったりする事もない。自然を感じ、物事がゆっくり変わっていく美しさを楽しむ価値観も失い、物が古くなったらすぐ捨てて買い換える有り様。

「わび」とは"To pause and listen to the simple state of nature"。生活に流されず、立ち止まる事を忘れないで、音に頼らない静寂な時間を持つ様にする。そうすると、感性は研ぎ澄まされ、音の本当の美しさが分かる様になる。

「さび」とは"Honoring time, tradition and imperfection"。時間による変化を素直に受け入れ、変わって行くことで生まれる伝統や未完璧な美しさを楽しんでみる。世の中の皆が、自然界のリズムに身を委ね、物事の違いではなく、良さに目を向けられる様になれば、壮絶なスピードで破壊されて行く自然を取り戻すことが出来るのではないか。世界を救うには、日本文化の「わびさび」の精神が不可欠とJohn Friend氏は熱く語る。

忙しい生活リズムから一旦立ち止まり、ゆっくり呼吸をし、心身を労わることで、物質的なステータスやラグジュアリーから解き放され、もっと本質的で大事な自然が感じられる余裕と意識が高められるのではないだろうか。